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信用創造

しんようそうぞう

信用創造(Credit Creation)とは、部分準備預金制度の下において、商業銀行が融資活動を行う過程で、現金通貨を直接増加させることなく、預金通貨という形で新たなマネーサプライを市場に供給する経済現象である。このメカニズムは、一連の預金と貸出の反復を通じて、当初の中央銀行が供給したベースマネーの何倍もの規模の信用量を経済全体に広げる機能を持つ、現代金融システムの中核をなす仕組みである。

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概要

信用創造は、現代の市場経済において通貨供給量(マネーサプライ)を決定づける根幹的な仕組みであり、銀行が単なる資金の仲介者ではなく、実質的な通貨の創造者としての役割を担っていることを示す。この機能が存在することで、経済は手元にある現金の量を超えた規模の取引や投資を行うことが可能となり、資本主義の発展を支えてきた。

信用創造のメカニズム:信用乗数

信用創造のプロセスは、主に商業銀行が負う「準備預金制度」と、それによって決まる「信用乗数」によって説明される。

部分準備預金制度

現代の多くの国では、銀行は受け入れた預金の一部を、現金または中央銀行への預け金として保有することが義務付けられている。これを法定準備金と呼び、その比率を法定準備率という。例えば、法定準備率が10%と定められている場合、銀行は預金100万円に対し、10万円を準備金として確保し、残りの90万円を融資に回すことができる。

この90万円が融資先の事業活動に使用され、それが結果的に別の銀行に預金されると、その銀行もまた10%を準備金として残し、残りの81万円をさらに融資する。この「貸出 → 預金 → 貸出」の連鎖が繰り返されることで、元々の現金の動きを超越した規模で預金通貨が創造されていく。

信用乗数による総量決定

最終的に市場に生み出される預金通貨の総量は、ベースマネー(中央銀行が供給する現金と準備預金の合計)と信用乗数によって決定される。信用乗数は、法定準備率の逆数として理論上定義される。

$$ \text{信用乗数} = \frac{1}{\text{法定準備率}} $$

もし法定準備率が10%(0.1)であれば、信用乗数は10となる。これは、中央銀行が供給した1円のベースマネーが、最大で10円の預金通貨(マネーサプライ)を生み出す可能性を意味する。もし銀行が受け入れた資金を全て貸し出しに回し、その全額が再び預金されるという理想的な連鎖が実現すれば、この上限まで信用創造が進むことになる。

ただし、現実には、銀行が法定準備率以上に自主的に準備金を積み増す場合(超過準備)や、借り手が受け取った融資金の一部を現金として手元に保有する場合(現金漏れ)があり、実際の信用乗数は理論値よりも小さくなる傾向がある。

メリットとデメリット(特徴)

信用創造は、経済に活力をもたらす基盤である一方で、金融システムの不安定性の原因ともなり得る両面性を持つ。

メリット:経済成長と効率化の促進

信用創造の最大のメリットは、少量の基軸となる通貨(ベースマネー)で、実体経済の成長を支えるために必要な大規模な資金供給を可能にすることである。銀行は、潜在的な貯蓄を生産的な投資へと変換する役割を果たし、企業による設備投資やイノベーションを後押しする。このメカニズムがなければ、経済成長はベースマネーの供給速度に厳しく制限されてしまう。信用創造は、資金の効率的な配分を促し、経済全体に流動性を提供することで、取引コストの低減にも貢献している。

デメリット:金融危機と信用収縮のリスク

信用創造はレバレッジ(てこの原理)の働きを内包しているため、過度に進むと経済の不安定性を増大させる。好景気において銀行がリスク選好度を高め、融資審査が甘くなると、過剰な信用供給が発生し、資産価格の急騰(バブル)を引き起こす可能性がある。このバブルが崩壊すると、貸し倒れが多発し、銀行のバランスシートが悪化する。

特に問題となるのが「信用収縮(クレジットクランチ)」である。金融システムへの信頼が失墜すると、銀行はリスク回避のため、健全な借り手に対しても融資を絞り込む(貸し渋り)。また、預金者が取り付け騒ぎを恐れて預金を現金に引き出す動きが加速すると、銀行は準備金を積み増さざるを得なくなり、信用創造のプロセスが急速に逆回転する。マネーサプライの急激な減少は、消費や投資を冷え込ませ、デフレや深刻な景気後退を引き起こす主要因となる。

関連する概念

マネーサプライとベースマネー

信用創造が直接的に影響を与えるのは「マネーサプライ」である。マネーサプライは、一般に流通している通貨の総量を示すが、この大部分は商業銀行が生み出した預金通貨で構成されている。これに対し、中央銀行が独占的に供給する現金と準備預金を合わせたものが「ベースマネー(マネタリーベース)」であり、信用創造はこのベースマネーを種銭として増幅される。中央銀行は金融政策を通じてベースマネーの量を調整することで、間接的に信用創造の総量をコントロールしようとする。

中央銀行の金融政策

中央銀行(例:日本銀行)は、信用創造の速度を調節するために複数の政策手段を持つ。最も一般的なのが、金利操作(短期金利の誘導)や公開市場操作(市場からの国債の売買)である。

金利を低く誘導することで、銀行の資金調達コストが下がり、企業や個人への融資意欲が高まる。これにより信用創造が活発化し、マネーサプライが増加する。逆に、景気の過熱を抑えるために金利を引き上げると、銀行は準備金の確保を厳格化し、信用創造の連鎖が鈍化する。このように、信用創造の機能は、中央銀行によるマクロ経済の安定化政策において、伝達メカニズムの中心を担っている。

由来・語源

「信用創造」という用語は、その活動が「信用(Credit)」を基盤とし、新しい通貨の形態を「創造(Creation)」することに由来する。歴史的に見ると、この仕組みの起源は、中世ヨーロッパの金匠(ゴールドスミス)が行っていた預金業務に遡る。

当時の金匠は、人々から金貨を預かり、その預り証を発行していた。この預り証が次第に支払いの手段として通用するようになり、これが初期の銀行券、ひいては預金通貨へと発展した。金匠は、預けられた金貨のすべてが同時に引き出されることはないという経験に基づき、手元に最低限の金貨(準備金)を残し、残りを利息付きで他者に貸し出すようになった。

この貸し出しの際に発行される預り証もまた市場で流通したため、金匠が実際に保有する金貨の総量よりもはるかに多くの「通貨(信用)」が市場に出回ることになった。これが、部分準備預金制度と信用創造の原型である。現代において「信用」とは、借り手が確実に返済するという信頼を意味し、この信頼に基づいて、銀行は帳簿上の記録として新たな預金通貨を生み出すのである。

使用例

(記述募集中)

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